不動産の購入や建築、自社ビル・工場・店舗の取得、賃貸物件への投資などでは、数千万円から数億円規模の資金が必要になることがあります。
こうした高額な資金需要に対応する代表的な資金調達方法が「不動産融資」です。
不動産融資という言葉は、不動産を購入するための融資だけを意味するものではありません。
収益物件を取得するための融資や、自社で使用する事業用不動産を取得するための融資、すでに所有している土地・建物を担保に事業資金を借りる不動産担保融資など、幅広い融資を含む言葉として使われています。
そのため、「不動産融資=不動産担保ローン」と考えるのは正確ではありません。
また、不動産の価値が高ければ必ず融資を受けられるわけでもありません。
金融機関は不動産の担保価値に加えて、企業の業績、財務内容、既存借入、キャッシュフロー、資金使途、物件の収益性などを総合的に確認します。
この記事では、主に法人・個人事業主が利用する不動産融資を中心に、種類や仕組み、審査基準、金利、担保評価、メリット・デメリット、利用するときの注意点まで詳しく解説します。
不動産融資とは?
不動産融資とは、一般的に土地や建物などの不動産に関連して行われる融資の総称です。
法律上「不動産融資」という一つの商品が定義されているわけではなく、金融実務上の幅広い呼び方と考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば、アパートや賃貸マンションを取得するために金融機関から資金を借りる場合も不動産融資です。
企業が自社工場を建設するための資金を借りる場合も該当します。
一方、すでに保有している本社ビルや土地、倉庫などを担保として、仕入代金や人件費などの運転資金を借りる場合は「不動産担保融資」と呼ばれます。
つまり、不動産融資には「不動産そのものを取得するための融資」と「既存の不動産を資金調達に活用する融資」の両方があります。
不動産融資を検討するときは、最初に「何のために資金を必要としているのか」を明確にすることが重要です。
物件取得、建築、設備投資、運転資金、借り換えなどによって適した融資商品や審査方法が異なるためです。
法人が利用する不動産融資の主な種類
企業向けの不動産融資には、大きく分けて収益不動産向け融資、不動産担保融資、事業用不動産融資、借り換え・リファイナンス目的の融資があります。
収益不動産向け融資
収益不動産向け融資は、アパート、賃貸マンション、オフィスビル、店舗など、賃料収入を得る目的で不動産を取得する際に利用する融資です。
個人向けでは「不動産投資ローン」「アパートローン」と呼ばれることがありますが、法人の場合は事業性融資として取り扱われるケースもあります。
収益不動産では、物件そのものから生まれる賃料収入が重要な返済原資となります。
そのため金融機関は、単純な売買価格だけでなく、所在地、築年数、建物構造、入居率、周辺の賃貸需要、現在の賃料、想定空室率、管理費、修繕費などを確認します。
現在満室だからといって、将来も同じ賃料と入居率が続くとは限りません。
建物の老朽化による修繕費の増加、周辺人口の減少、競合物件の増加などによって空室率が上昇したり、賃料が下落したりする可能性があります。
そのため、収益不動産向け融資では「現在の収益」だけではなく、「将来も返済を続けられる物件か」が重要になります。
金融庁が2019年に公表した投資用不動産向け融資に関する調査でも、賃料水準の下落や空室増加などのストレスを考慮した収支シミュレーションを行い、賃貸事業としての妥当性や返済可能性を確認する考え方が示されています。
不動産担保融資
不動産担保融資は、企業や個人事業主が所有する土地や建物を担保として資金を借りる方法です。
自社ビル、店舗、工場、倉庫、土地、賃貸物件などを担保として提供し、運転資金や設備資金、新規事業資金などを調達します。
無担保融資では希望額を調達できない場合でも、不動産に一定の担保余力があれば、より大きな金額や長期の返済期間で融資を受けられる可能性があります。
ただし、「不動産があるから融資できる」というものではありません。
金融機関は不動産の担保評価だけでなく、企業の売上、利益、キャッシュフロー、既存借入、納税状況、今後の事業計画なども確認します。
また、対象不動産にすでに抵当権や根抵当権が設定されている場合、先順位の担保権や借入残高も融資可能額に影響します。
市場価格1億円の不動産を所有しているからといって、新たに1億円を借りられるとは限らない点に注意が必要です。
事業用不動産融資
事業用不動産融資は、企業が自社で使用する本社、事務所、店舗、工場、倉庫などを購入・建築するための融資です。
収益不動産との大きな違いは、不動産そのものから直接家賃収入を得ることを目的としていない点です。
したがって、主な返済原資は会社の本業から生まれる利益やキャッシュフローとなります。
金融機関は過去の決算内容だけでなく、不動産取得後の売上や利益への影響も確認します。
たとえば、自社工場を取得することで生産能力が向上するのか、賃貸店舗から自社所有店舗に切り替えることで長期的なコスト削減につながるのかといった点も、事業計画を説明する際の重要な材料になります。
自社不動産の取得には、家賃負担をなくせる、設備を自社仕様に整えやすい、不動産を会社の資産として保有できるといったメリットがあります。
一方で、長期間にわたり多額の借入を抱えることになるため、本業の売上が低下した場合でも返済できる計画を立てておかなければなりません。
借り換え・リファイナンス目的の不動産融資
すでに不動産関連の借入がある企業では、既存融資を新たな融資へ切り替える「借り換え」や「リファイナンス」を検討することがあります。
借り換えを行うことで、金利の引き下げ、月々の返済額の軽減、返済期間の見直し、複数借入の整理などにつながる場合があります。
借入当初より会社の業績が改善している場合や、元本返済が進んでいる場合、不動産価格の上昇などによって担保余力が生じている場合には、以前より良い条件を提示される可能性もあります。
ただし、返済期間を延長すれば毎月の返済額が減っても、最終的な支払利息が増える場合があります。
さらに借り換えには、既存抵当権の抹消、新たな抵当権の設定、司法書士報酬、融資手数料などが発生することがあります。
したがって、金利差だけでなく諸費用を含めた総コストで判断することが大切です。
不動産融資では抵当権が重要
不動産融資を理解するうえで欠かせないのが「抵当権」です。
民法369条では、抵当権者は、債務者または第三者が占有を移転せず担保として提供した不動産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有すると規定されています。
抵当権を設定しても、金融機関へ不動産そのものを引き渡すわけではありません。
自社ビルであれば引き続き会社が利用できますし、賃貸マンションなら通常どおり賃貸経営を続けられます。
ただし、借入金を返済できなくなれば、債権者が抵当権を実行し、裁判所の競売手続などを通じて不動産を換価して貸付金の回収を図る可能性があります。
また、一つの不動産に複数の抵当権が設定されている場合、原則として登記の先後によって抵当権の順位が決まります。
民法373条でも、同じ不動産について複数の抵当権が設定されたときは、その順位は登記の前後によると規定されています。
そのため、新たに不動産融資を申し込む場合には、対象不動産にどのような抵当権・根抵当権が設定されているかを確認しておくことが重要です。
不動産融資の融資額はどう決まる?
不動産融資では、「不動産価格=借りられる金額」ではありません。
たとえば1億円で購入した不動産であっても、金融機関が1億円の担保価値を認めるとは限りません。
金融機関は独自の基準によって不動産を評価します。
土地であれば立地、面積、形状、道路への接道状況、用途地域、周辺取引事例などが判断材料になります。
建物であれば構造、築年数、延床面積、用途、維持管理状況などが確認されます。
さらに、実際に売却する必要が生じた場合に買い手が見つかりやすいかという「流動性」も重要です。
特殊な設備を備えた工場や地方の大型施設などは、通常の住宅やオフィスと比較して買い手が限定される場合があります。
そのため、売買価格が高くても担保評価が慎重になる可能性があります。
収益不動産の場合には、土地・建物そのものの価値だけでなく、賃料収入などから物件価値を判断する収益性の観点も重要です。
LTVとは?
不動産融資では「LTV(Loan to Value)」という指標が使われることがあります。
LTVは、不動産評価額に対してどれだけ借入をしているかを示す考え方で、
LTV=借入額または融資残高÷不動産評価額×100
として計算されます。
たとえば、金融機関の評価額が8,000万円の不動産に対し6,000万円を借りる場合、LTVは75%です。
LTVが高いほど自己資金の割合が少なくなりますが、不動産価格が下落したときに担保価値が借入残高を下回るリスクも高まります。
ただし、「LTV70%以下なら融資可能」「80%なら融資不可」といった全国共通の基準はありません。
融資を行う金融機関、物件の種類、借入人の信用力、事業内容、返済能力などによって判断は異なります。
LTVだけで融資の可否が決まるわけではないことを理解しておきましょう。
不動産融資の審査基準
不動産融資の審査では、大きく「借入人」と「不動産」の両面が確認されます。
重要なのは、担保があることと、返済できることは別だという点です。
担保価値が十分でも、事業から返済原資を確保できないと判断されれば融資が難しくなる可能性があります。
企業の業績・財務状況
法人向け不動産融資では、決算書や試算表などをもとに企業の財務状況が確認されます。
売上高や営業利益だけではなく、借入金の残高、自己資本、現預金、債務超過の有無なども重要です。
直近が赤字だからといって必ず融資できないわけではありません。
一時的な大型投資や特殊要因による赤字なのか、本業が継続的に赤字なのかによって評価は変わります。
赤字の場合には、その理由と今後どのように改善するのかを具体的に説明できることが重要です。
キャッシュフローと返済能力
不動産融資では利益だけではなく、実際に返済へ充てられるキャッシュフローも重要です。
会計上は黒字であっても、売掛金が増えていたり、在庫負担が大きかったりすれば、手元資金が不足していることがあります。
反対に、減価償却費が大きい企業では、当期純利益だけを見るよりも実際のキャッシュ創出力を確認する必要があります。
金融機関は、既存借入の返済額に新たな融資の返済を加えても、事業を継続しながら安定して返済できるかを確認します。
既存借入
企業がすでに複数の借入を抱えている場合、その返済負担も審査対象になります。
新しい不動産融資だけなら返済できても、既存の銀行融資、設備資金、リースなどを含めると資金繰りが厳しくなるのであれば、融資判断は慎重になります。
借入総額だけではなく、毎月・毎年の返済額とキャッシュフローのバランスを見ることが重要です。
税金などの納付状況
法人向け融資では、税金や社会保険料などの納付状況を確認される場合があります。
納付に遅れがある場合には、その理由や解消状況について説明を求められる可能性があります。
融資申込みの直前になって慌てるのではなく、日頃から納税や資金繰りを適切に管理しておくことが重要です。
不動産の担保価値
不動産を担保とする融資では、金融機関が物件の担保価値を評価します。
重要なのは「いくらで購入したか」ではなく、金融機関が「必要になった場合にどの程度の価格で換価できるか」をどう判断するかです。
特に地方の特殊用途物件、老朽化した建物、権利関係が複雑な土地などは、売却に時間がかかる可能性があるため慎重に評価されることがあります。
資金使途
法人融資では「何に使う資金なのか」も重要です。
工場取得、店舗購入、新規出店、設備投資、借り換えなど、資金使途を明確に説明できる必要があります。
なぜその投資が必要なのか、投資によって企業の収益がどう改善するのか、その結果どのように返済するのかまで整理しておくと、金融機関に事業の合理性を説明しやすくなります。
収益不動産では物件の収支も重要
賃貸マンションやアパート、店舗などの収益物件では、家賃収入だけで収益性を判断するのは危険です。
賃貸経営では管理費、固定資産税、火災保険料、修繕費、原状回復費などが発生します。
さらに、常に満室とは限りません。
空室が発生すれば家賃収入は減少しますし、周辺相場が下落すれば賃料の値下げが必要になる場合もあります。
借入期間が長くなれば、大規模修繕や設備交換が必要になる可能性も高くなります。
したがって、現在の家賃収入でギリギリ返済できる計画ではなく、空室率の上昇、賃料下落、修繕費増加、金利上昇などが発生しても一定の返済余力が残る計画を立てることが重要です。
不動産融資の金利
不動産融資の金利は一律ではありません。
金融機関、借入人の信用力、融資金額、返済期間、担保価値、資金使途、物件の収益性などによって変わります。
そのため、「不動産融資は年○%が相場」と単純に判断することはできません。
また、金利には大きく固定金利と変動金利があります。
変動金利では、市場金利などに応じて適用金利が見直されるため、借入時の金利が低くても、将来金利が上昇すれば利息負担が増える可能性があります。
固定金利は、一定期間または契約期間について金利が固定されるため、資金計画を立てやすいのが特徴です。
たとえば住宅金融支援機構の賃貸住宅建設融資でも、35年固定金利と15年固定金利のタイプが用意されています。
法人が不動産融資を受ける場合にも、現在の金利だけではなく、将来金利が上昇した場合の返済額を想定しておくことが重要です。
不動産融資にかかる費用
不動産融資のコストは利息だけではありません。
金融機関や融資商品によって異なりますが、融資事務手数料、保証料、担保評価費用、契約書に関する印紙税、司法書士報酬、抵当権設定登記の登録免許税などが発生する場合があります。
特に不動産を担保にする場合には、登記費用を考慮する必要があります。
抵当権設定登記の登録免許税は、原則として債権金額または根抵当権の極度額に1,000分の4、つまり0.4%を乗じて計算します。
一方、個人が一定の要件を満たす自己居住用住宅を新築・取得し、その資金の借入れについて抵当権を設定する場合には、2027年3月31日まで0.1%の軽減税率が適用される制度があります。
法人向け事業用不動産へ一律に適用される軽減ではない点には注意が必要です。
そのため金融機関を比較するときには、金利だけではなく、融資実行から完済までに必要となる費用全体を確認しましょう。
不動産融資のメリット
不動産融資の大きなメリットは、高額な資金を長期で調達できる可能性があることです。
工場や店舗、自社ビルなどを取得する場合、自己資金だけで数千万円から数億円を支払えば、会社の手元資金が大幅に減少してしまいます。
融資を利用すれば、取得費用を長期間に分散しながら、一定の運転資金を会社に残すことができます。
企業経営では、黒字であることと資金が十分にあることは同じではありません。
従業員への給与、仕入代金、外注費、税金など、日常的に多くの現金が必要です。
不動産取得に自己資金を使い切らず、一定の現預金を確保することは、資金繰りの安定という観点でも重要です。
さらに、十分な担保価値や返済能力が認められれば、無担保融資では難しい金額や返済期間で資金調達できる可能性があります。
不動産融資のデメリットとリスク
最大の注意点は、返済できなくなった場合に担保不動産を失う可能性があることです。
特に本社、主要店舗、工場など事業継続に不可欠な不動産を担保にする場合、担保権の実行による影響は非常に大きくなります。
また、不動産融資は審査に時間がかかる場合があります。
金融機関は企業の財務状況だけでなく、不動産登記、権利関係、担保評価、収益性などを確認する必要があるからです。
今日申し込んで明日資金が必要という短期的な資金需要には、適さないケースもあります。
不動産価格の下落もリスクです。
取得時点では高い価値があった土地や建物でも、人口減少、地域経済の変化、建物の老朽化などによって価値が下落する可能性があります。
収益不動産の場合は、さらに空室、賃料下落、大規模修繕、金利上昇などのリスクも考える必要があります。
不動産融資を受けるまでの流れ
不動産融資では、まず資金使途と必要金額を整理して金融機関へ相談します。
その後、企業の決算書や試算表などの財務資料と、不動産に関する資料を提出します。
法人の場合には、決算書、直近試算表、法人の登記事項証明書、事業計画、資金繰り表などを求められることがあります。
不動産についても、登記事項証明書、売買契約書、固定資産税関係資料、図面、公図、賃貸借契約書、レントロールなどが必要になる場合があります。
金融機関が企業の返済能力と不動産の担保価値を審査し、問題がなければ融資金額、金利、返済期間などの条件が提示されます。
契約締結後、必要に応じて抵当権設定登記を行い、融資が実行されます。
必要書類や審査期間は金融機関や融資内容によって異なるため、早めに確認しておくことが重要です。
不動産融資の審査前に準備すべきこと
法人が不動産融資を受ける場合には、「価値のある不動産があります」という説明だけでは十分ではありません。
金融機関が知りたいのは、「何のために借りるのか」「借りることで事業がどう変わるのか」「どこから返済するのか」です。
たとえば工場を取得するのであれば、生産能力や売上がどの程度増えるのか、現在支払っている賃料と取得後の返済額にどの程度差があるのかなどを整理します。
収益物件の場合には、満室を前提とするのではなく、一定の空室率や修繕費を見込んだ収支計画を作ることが重要です。
直近決算から時間が経過している場合には、最新の試算表や資金繰り表を用意しておくと、現在の会社の状況を説明しやすくなります。
融資を受けること自体を目的にするのではなく、「融資後も安定して返済できるか」を基準に計画を作ることが重要です。
2026年から企業価値担保権もスタート
2026年以降の企業融資を考えるうえで重要な制度の一つが「企業価値担保権」です。
2026年5月25日に「事業性融資の推進等に関する法律」が施行され、企業価値担保権制度がスタートしました。
金融庁は企業価値担保権について、不動産担保や経営者保証等に過度に依存せず、事業の将来性に着目した融資を後押しする制度と説明しています。
企業価値担保権は、企業価値担保権信託契約によって設定する仕組みとなっており、従来の不動産担保と単純に置き換わる制度ではありません。
つまり、「2026年から不動産担保が不要になった」ということではありません。
不動産は今後も企業融資における重要な担保資産です。
一方、不動産などの有形資産を十分に持っていない企業でも、事業の将来性やキャッシュフローなどを重視して資金供給を行う方向性がより明確になったと考えることができます。
企業としては、不動産担保融資だけでなく、事業性融資、信用保証付き融資などを含め、自社に適した資金調達方法を比較することが大切です。
不動産融資とファクタリングの違い
事業者の資金調達では、不動産融資が適しているケースと、ファクタリングなど別の方法が適しているケースがあります。
たとえば、自社工場を建設するために5,000万円を調達し、10年、15年といった長期間で返済するのであれば、不動産融資や設備資金の融資を検討するのが一般的です。
一方、建設会社が工事を完成させ、請求書も発行済みであるものの、売掛先からの入金が2か月後で、その前に外注費や材料費を支払わなければならないといった場合は、短期的な資金繰りの問題です。
こうしたケースでは、ファクタリングという選択肢があります。
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社へ売却し、本来の入金期日より前に資金化する方法です。
契約の実態が適正な債権売買であれば融資とは異なるため、不動産を担保として提供する必要はありません。
したがって、不動産を所有していない企業でも、対象となる売掛債権を保有していれば利用を検討できます。
ただし、ファクタリングでは買取手数料が発生します。
数年、十数年にわたって利用する設備資金や不動産取得資金をファクタリングで調達するのは通常適していません。
不動産融資とファクタリングは競合するものではなく、資金需要の性質によって使い分けるものです。
長期的な不動産・設備投資であれば融資、売掛金の入金までに発生する一時的な資金不足であればファクタリングというように、「何のための資金なのか」「いつ入金されるのか」「どの程度の期間必要なのか」を整理して判断しましょう。
不動産融資は担保価値だけでなく返済能力が重要
不動産融資は、土地や建物の購入、収益不動産への投資、自社ビル・店舗・工場の取得、既存不動産を活用した事業資金の調達など、さまざまな場面で利用できます。
不動産を担保として提供することで、高額かつ長期の資金を調達できる可能性がある点は大きなメリットです。
しかし、価値の高い不動産を所有していれば必ず融資を受けられるわけではありません。
金融機関は、不動産の担保価値だけでなく、企業の業績、財務状況、既存借入、キャッシュフロー、資金使途、返済計画などを総合的に確認します。
特に収益不動産では、現在の家賃や入居率だけでなく、将来の空室、賃料下落、修繕費、金利上昇なども考慮した資金計画が欠かせません。
また、2026年5月からは企業価値担保権制度が始まり、不動産担保や経営者保証等に過度に依存せず、事業そのものの将来性に着目する融資を後押しする制度整備も進んでいます。
企業の資金調達では、「不動産を担保にできるか」だけを基準に考える必要はありません。
不動産取得や設備投資など長期的な資金需要なのか、売掛金の入金待ちによる短期的な資金不足なのかによって適切な調達方法は異なります。
必要な金額、必要な時期、資金が必要な期間、返済原資、担保提供によるリスクを整理し、不動産融資・事業性融資・ファクタリングなどを比較したうえで、自社の資金繰りに合った方法を選ぶことが重要です。

