飲食店、美容室、エステ、小売店など、カード決済の利用が多い事業者にとって、カード売上の入金は日々の運転資金を支える重要な収入です。
決済代行会社からの入金停止や入金遅れが発生すると、売上自体は計上されていても手元の現金が不足し、仕入代金、家賃、給与、外注費などの支払いに影響する可能性があります。
2026年7月6日、クレジットカード売上の早期決済代行サービスを提供していた株式会社全東信は、大阪地方裁判所へ自己破産を申請し、同日、破産手続開始決定を受けました。
負債総額は2025年3月期時点で約1,259億2,900万円と報じられています。
本記事では、特定企業の破産を過度に不安視するのではなく、「決済代行の入金停止が起きたときに何を確認するべきか」「資金繰りが厳しい場合にどのような選択肢があるか」を整理します。
決済代行会社の入金停止・破産で起こること
決済代行会社の入金停止や破産が発生すると、すでに利用者がカードで支払った売上であっても、加盟店への振込みが予定どおり行われない場合があります。
その結果、帳簿上は売上があるにもかかわらず、預金口座には資金が入らない状態となります。
特に、カード売上の比率が高い飲食店や美容室、エステ、サービス業、小売業では、数日から数週間のカード売上の入金遅れでも、仕入れや人件費の支払いに影響が出ることがあります。
また、利用中の決済端末や決済サービスが停止した場合は、新たなカード売上を受け付けられなくなる可能性もあります。
未入金分への対応だけでなく、今後の売上を止めないため、代替となる決済会社への切替も必要です。
全東信の破産管財人からは、同社の決済代行サービスを中止し、加盟店がカード決済を再開するには、改めてカード会社との加盟店契約が必要になるとの案内が出されています。
また、破産手続開始までに支払われていない売上金については、従来の支払期日に入金されるものではなく、破産債権として取り扱われる旨が示されています。
破産手続が開始された会社に対する未入金分については、破産管財人からの案内を確認し、必要に応じて債権届出などの手続きを進める必要があります。
まず確認すべきこと
未入金額
最初に、決済代行会社から最後に入金された日を確認し、その後に発生したカード売上を集計します。
売上明細、決済端末のデータ、管理画面、通帳の入金履歴を照合し、未入金額をできるだけ正確に把握してください。
集計した資料は、破産手続における債権届出や、金融機関へ資金繰りを相談する際にも必要になる可能性があります。
入金予定日
未入金となっている売上の本来の締日と入金予定日を確認します。
単なる事務処理の遅れなのか、決済サービスの停止によるものなのか、破産手続の対象となるものなのかによって対応が異なります。
予定日を過ぎている場合は、対象期間と金額を一覧にしておきましょう。
決済会社・カード会社からの通知
決済会社の公式サイト、メール、郵送物、管理画面のお知らせを確認します。
破産管財人から案内が出ている場合は、債権届出の期限、必要書類、問い合わせ方法などを確認し、通知、契約書、売上明細などを保存しておきましょう。
他の売上入金の有無
決済代行の未入金だけを見るのではなく、現金売上、振込売上、別のカード決済、請求書による売掛金など、今後入金される資金を一覧にします。
同時に、家賃、給与、仕入代金、外注費、税金、借入返済などの支払予定も整理し、いつ、いくら不足するのかを資金繰り表で確認することが重要です。
代替決済会社への切替状況
既存端末が利用できない場合は、現金、銀行振込、QRコード決済、別のカード決済サービスなど、代替手段を早めに確保します。
入金サイクル、決済手数料、審査期間、導入までの日数などを比較し、カード決済が使えないことによる売上機会の減少を防ぎましょう。
資金繰りが厳しい場合の選択肢
金融機関への相談
取引銀行、信用金庫、日本政策金融公庫などへ早めに相談します。
相談時には、直近の試算表、資金繰り表、通帳、未入金額が分かるカード売上明細、決済会社との契約資料などを準備すると、現在の状況と必要資金を説明しやすくなります。
取引先への支払条件の相談
仕入先や外注先に事情を説明し、支払日の延期や分割払いを相談する方法もあります。
ただし、一方的に支払いを遅らせると取引先からの信用を損なう可能性があります。
支払期日を迎える前に相談し、変更した支払日や支払方法を書面、メールなどに残すことが大切です。
補助金・制度融資の確認
自治体の制度融資、信用保証協会の保証制度、商工会議所などの相談窓口も確認しましょう。
ただし、制度ごとに対象者、利用条件、審査があります。補助金についても、原則として事業実施後に交付されるものが多いため、直近の支払いに必要な資金をすぐに補う方法には向かない場合があります。
2026年7月7日時点では、日本飲食団体連合会も、全東信の未入金により影響を受けた事業者に対し、取引金融機関や日本政策金融公庫への相談、信用保証制度などの確認を案内しています。
各制度を利用できるかどうかは、金融機関や関係窓口への個別確認が必要です。
ファクタリングの活用
ファクタリングは、事業者が保有する売掛金を、実際の入金日より前に資金化する方法です。
融資とは異なり、対象となる売掛債権の内容や売掛先の信用力、取引実態、過去の入金状況などを確認したうえで審査が行われます。
ただし、決済会社が破産したからといって、その未入金分をそのまま買い取れるわけではありません。
原則として、破産した決済会社への債権とは別に、確定した売掛金、請求書または入金予定が確認できることが必要です。
ファクタリングで対応できるケース
ファクタリングで対応できる可能性があるのは、たとえば次のようなケースです。
・法人の取引先に対する請求書や確定した売掛金がある
・売掛先、請求金額、支払期日、入金口座が明確である
・契約書、発注書、請求書、納品書などで取引内容を確認できる
・過去の入金実績や売上実態を通帳などで確認できる
・申込事業者が法人であり、所在地や事業内容などの実態を確認できる
例えば、カード売上の入金停止によって運転資金が不足していても、別の法人取引先に対する請求書があり、将来の入金が確認できる場合は、その売掛金を対象として資金化を検討できる可能性があります。
利用の可否や資金化できる金額は、売掛金の内容や審査結果によって異なります。
ファクタリングで対応が難しいケース
一方、次のようなケースは対応が難しくなります。
・破産した決済代行会社に対する未入金分そのものを資金化したい
・売上明細、請求書、契約書などの売上証跡が不足している
・誰から、いつ、いくら入金されるのかが不明確である
・すでに支払遅延や回収不能が明らかになっている債権である
・個人利用の代金や、事業実態を確認できない取引である
・同じ売掛金をすでに他社へ譲渡している
特に、破産手続開始後の決済代行会社に対する未入金分は、通常どおり回収できる確定債権とは性質が異なります。
「ファクタリングを利用すれば、全東信の未入金分を回収できる」「未入金額をそのまま資金化できる」というものではないため、誤解しないよう注意が必要です。
早めに相談することが重要
資金繰り対策は、支払期日を過ぎてからでは選択肢が限られてしまいます。
決済代行の入金停止が分かった時点で、未入金額と今後の支払予定を整理し、金融機関、税理士、弁護士、商工会議所、ファクタリング会社など、相談内容に合った窓口へ早めに連絡することが重要です。
相談時には、次の内容を説明できるようにしておきましょう。
・現時点での未入金額
・資金が不足する時期と金額
・直近の支払予定
・今後入金される売上や請求書
・代替決済会社への切替状況
資金調達の可否だけでなく、支払いの優先順位や取引先との交渉、代替決済手段の導入も含めて検討する必要があります。
まとめ
決済代行会社の入金停止や破産が起きた場合は、まず未入金額、入金予定日、公式通知、他の売上入金、代替決済会社への切替状況を確認してください。
そのうえで資金不足が見込まれる場合は、金融機関への相談、支払条件の調整、制度融資の確認、ファクタリングなどの方法を比較します。
ファクタリングは、カード売上の入金遅れによる一時的な資金不足への対策となる可能性がありますが、破産した決済代行会社への未入金分そのものを買い取るものではありません。
別の確定した売掛金や請求書があり、売掛先、支払期日、取引実態を確認できることが基本となります。
決済代行会社からの入金遅延や、カード売上の入金停止により資金繰りにお困りの場合でも、別の売掛金・請求書・入金予定が確認できる場合は、ファクタリングで対応できる可能性があります。
まずは現在の入金予定や請求書の状況をご確認のうえ、お早めにご相談ください。

