法人が税金を滞納すると、本来の税額に延滞税が加算されるだけでなく、預金や売掛金などの財産を差し押さえられる可能性があります。
特に預金や売掛金は、給与、家賃、仕入代金などの支払いに使う重要な運転資金です。
差し押さえによって自由に使えなくなると、税金以外の支払いまで滞り、事業継続が難しくなるおそれがあります。
一方、税金を期限までに納付できない場合でも、早い段階で税務署や自治体に相談することで、納税の猶予や換価の猶予を利用できる可能性があります。
本記事では、法人が滞納しやすい税金、滞納による影響、差し押さえまでの流れ、納付が難しい場合の対処法について解説します。
法人が納める主な税金と納付期限
税金の滞納を防ぐためには、まず自社が納める税金と納付期限を正確に把握することが重要です。
法人が納める主な税金には、次のようなものがあります。
・法人税・地方法人税
原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内
・法人の消費税・地方消費税
原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内
・法人住民税・法人事業税
原則として事業年度終了後2か月以内
・源泉所得税
原則として給与や報酬を支払った月の翌月10日
※給与を支給する従業員が常時10人未満で、税務署から納期の特例の承認を受けている場合は、年2回にまとめて納付できます。
・固定資産税・自動車税など
自治体や税目ごとに定められた期限
法人が税金を滞納した場合の主な影響
延滞税・延滞金が発生する
税金を納期限までに納付しなかった場合は、原則として納期限の翌日から、実際に納付した日までの日数に応じて延滞税が発生します。
国税の延滞税率は年度によって変わります。2026年1月1日から12月31日までの期間は、原則として納期限の翌日から2か月を経過する日までは年2.8%、それ以降は年9.1%です。
地方税についても、納期限を過ぎると延滞金が加算されます。
延滞期間が長くなるほど納付総額が増えるため、全額を支払えない場合でも早めに相談することが重要です。
なお、申告期限そのものを過ぎていた場合や、申告内容に誤りがあった場合は、延滞税とは別に無申告加算税、過少申告加算税、重加算税などが課される可能性があります。
督促や財産調査が行われる
納期限を過ぎても税金が納付されない場合、税務署や自治体から督促状が送付されます。
督促後も納付や相談がない場合は、電話、書面、訪問などによる催告のほか、差し押さえに向けた財産調査が行われる可能性があります。
財産調査の対象となり得るのは、主に次のような財産です。
- 預金
- 売掛金
- 不動産
- 車両
- 機械や設備
- 有価証券
- 保険の解約返戻金
- 貸付金などの債権
税務署などが財産の所在を把握するため、金融機関や取引先などへ照会を行うこともあります。
預金や売掛金を差し押さえられる可能性がある
税金を滞納したまま対応しなければ、会社名義の財産が差し押さえられる可能性があります。
預金が差し押さえられた場合は、差し押さえの対象となった預金債権を自由に利用できなくなり、給与、家賃、仕入代金、借入返済などの支払いに影響するおそれがあります。
また、売掛金が差し押さえられると、取引先である売掛先に債権差押通知書が送付されます。
売掛先は、差し押さえられた金額を滞納会社へ支払うことを禁止され、国へ支払うことになります。
このため、売掛金の差し押さえは資金繰りだけでなく、取引先との信用関係にも影響を及ぼす可能性があります。
融資や取引に影響することがある
税金の滞納があると、金融機関の融資審査や公的融資の手続きに影響することがあります。
国税庁が発行する納税証明書には、納付税額や未納税額を証明するもののほか、「未納の税額がないこと」を証明する書類があります。
日本政策金融公庫の中小企業向け融資でも、主な提出資料として決算書、税務申告書、納税証明書などが案内されています。
税金を滞納しただけで、すべての融資が直ちに受けられなくなるわけではありません。
しかし、追加融資や借り換えを希望する際に、滞納理由、解消の見通し、納付計画などの説明を求められる可能性があります。
税金の滞納から差し押さえまでの流れ
法人が税金を滞納した場合は、一般的に次のような流れで手続きが進みます。
1.納付期限を過ぎる
納付期限までに税金を納めなかった時点で滞納となり、納期限の翌日から延滞税または延滞金が発生します。
「数日程度なら問題ない」と考えず、納付漏れに気付いた時点で速やかに納付するか、担当窓口へ連絡しましょう。
2.督促状が届く
未納が続くと、税務署や自治体から督促状が届きます。
督促状には、未納となっている税目、対象期間、税額、指定された納付期限などが記載されています。
複数の税金を滞納している場合は、すべての通知を整理し、未納額の総額を確認することが必要です。
国税については、法律上、督促状を発した日から10日を経過しても完納されない場合、差し押さえの要件を満たします。
実際にいつ差し押さえが行われるかは個別の状況によりますが、「何度も催告されるまで大丈夫」と考えるのは危険です。
3.催告・財産調査が行われる
督促後も納付や相談がない場合、電話、書面、訪問などによる催告が行われることがあります。
同時に、金融機関への照会、取引先への照会、不動産や車両の登録情報の確認など、差し押さえ可能な財産を把握するための調査が進められる可能性があります。
この段階で連絡を無視すると、納税する意思がないと判断されるおそれがあります。
全額を用意できなくても、納付可能額と今後の入金予定を整理して相談することが重要です。
4.財産が差し押さえられる
滞納が解消されない場合は、預金、売掛金、不動産、車両、設備などが差し押さえられます。
差し押さえられた財産は、原則として会社の判断だけで自由に処分できません。
特に預金と売掛金は現金化しやすいため、資金繰りへの影響が大きくなります。
売掛金などの債権を差し押さえる場合は、第三債務者である取引先などに差押通知書が送付されます。
5.取り立てや公売によって換価される
差し押さえられた預金や売掛金は取り立てによって回収され、不動産や動産は公売などによって換価されます。
公売による売却代金は、滞納税金や滞納処分費に充当されます。
国税庁は、差押財産の換価について、滞納者の意思にかかわらず売却する強制的な処分であると説明しています。
差し押さえ後は会社側が選択できる方法が少なくなるため、督促や催告の段階で対応を始めることが重要です。
税金を滞納した場合に今すぐ行うべき対処法
税務署や自治体に早急に相談する
期限までに納付できないことが分かった時点で、所轄の税務署や自治体へ相談しましょう。
督促状が届いている場合は、書面に記載された担当部署へ連絡します。
相談する際は、単に「支払えない」と伝えるのではなく、次の内容を整理しておくと話が進みやすくなります。
- 現在の預金残高
- 税金の未納額
- 売掛金の入金予定
- 給与や家賃などの支払予定
- 借入金の返済予定
- 毎月納付できる金額
- 滞納を解消できる見込み時期
口頭だけでなく、資金繰り表や試算表を用意し、実行可能な納付計画を示すことが大切です。
納税の猶予・換価の猶予を検討する
一定の要件を満たす場合は、「納税の猶予」や「換価の猶予」を受けられる可能性があります。
納税の猶予
災害、病気、事業の休止・廃止、事業上の著しい損失などにより、税金を一時に納付できない場合に利用できる可能性がある制度です。
通常の納税の猶予期間は、原則として1年以内です。猶予が認められた場合は、猶予期間中の延滞税の全部または一部が免除される場合があります。
換価の猶予
税金を一時に納付すると事業の継続が困難になるおそれがあり、納税について誠実な意思がある場合などに、差し押さえた財産の換価や一定の差し押さえを猶予してもらう制度です。
申請による換価の猶予は、原則として納期限から6か月以内に申請する必要があります。
猶予制度は、申請すれば必ず認められるものではありません。
また、猶予中に分割納付計画を守れなかった場合や、新たな滞納が発生した場合は、猶予が取り消される可能性があります。
新たな滞納を発生させない
すでに税金を滞納している場合でも、現在発生している税金の納付を止めると、未納額がさらに増えてしまいます。
特に源泉所得税は毎月納期限が到来することが多いため、既存の滞納分とは分けて管理し、新たな滞納を発生させない体制が必要です。
消費税についても、決算時にまとめて準備しようとすると不足しやすいため、売上入金の都度、納税見込み額を別口座へ移すなどの方法が有効です。
限られた資金をどの税金に充てるかについては、会社だけで判断せず、税務署や税理士と相談しながら決めましょう。
資産売却や資金調達を検討する
納税資金を確保するためには、次のような方法を検討します。
- 遊休資産や不要な車両・設備の売却
- 不要在庫の処分
- 経費や役員報酬の見直し
- 売掛先への早期入金の依頼
- 金融機関への融資相談
- 既存借入金の返済条件の見直し
- 売掛債権の早期資金化
資産を売却する場合は、差し押さえられる前に検討することが重要です。
差し押さえ後は、会社の判断だけで自由に処分できなくなる可能性があります。
また、売掛債権を早期資金化する場合は、対象となる債権がすでに差し押さえられていないか、二重譲渡にならないかを確認しなければなりません。
資金調達によって納税できても、その後の給与や仕入代金が不足しては事業を継続できません。
調達手数料や返済額まで含め、資金化後の資金繰りを確認する必要があります。
税理士・弁護士などの専門家に相談する
税金滞納に加えて、申告内容の修正、資金ショート、借入返済、取引先への支払いなど複数の問題が発生している場合は、専門家への相談を検討しましょう。
税理士は、申告内容の確認、納付計画や資金繰り表の作成、税務署との相談に関する支援を行います。
差し押さえが迫っている場合や、廃業、法人破産、民事再生などを検討している場合は、弁護士への相談も必要です。
問題が深刻になってからでは選択肢が限られます。
督促状が届いた段階や、近い将来に納付できないことが判明した段階で相談することが重要です。
法人の税金を代表者個人が支払うケースはある?
法人の税金は、原則として法人自身が納付義務を負います。
そのため、法人が税金を滞納したからといって、代表者個人が当然に支払い義務を負うわけではありません。
ただし、法人の解散・清算時に税金を納付せず、株主などへ残余財産を分配した場合などは、清算人や財産の分配を受けた者に第二次納税義務が生じる可能性があります。
また、法人の資金や資産を代表者個人へ不当に移転した場合なども、個別の事情によって責任を問われる可能性があります。
税金を滞納した状態で廃業、解散、事業譲渡、資産移転を行う場合は、実行前に税理士や弁護士へ相談しましょう。
法人を解散・破産すれば滞納税金はなくなる?
法人を解散しただけで、滞納している税金が自動的になくなるわけではありません。
解散後も清算手続きが続き、必要な申告や納付を行わなければなりません。
残余財産がある場合は、税金などの債務を整理した後で株主などへ分配する必要があります。
法人破産の場合は、税金の種類や発生時期によって、破産手続き上の取り扱いや優先順位が異なります。
破産を申し立てればすべての税金が一律に消滅するというものではありません。
廃業や破産を検討している場合は、会社の資産がなくなる前に、税務と法務の両面から専門家へ相談することが必要です。
税金滞納を防ぐための資金管理方法
納税予定を資金繰り表に反映する
法人税や消費税を「決算後に考える支払い」にせず、毎月の資金繰り表に見込み額を計上しましょう。
決算時の納税だけでなく、中間申告、源泉所得税、固定資産税、自動車税など、年間を通じて発生する税金を一覧化することが重要です。
納税専用口座を設ける
売上が入金された時点で、納税見込み額を別口座へ移しておくと、運転資金として使い込むリスクを抑えられます。
特に消費税については、毎月の売上に応じて一定割合を納税用口座へ積み立てる方法が有効です。
納付期限をカレンダーで管理する
納付期限を経理担当者だけで管理すると、担当者の不在や引き継ぎ漏れによって納付を忘れる可能性があります。
社内カレンダーや会計システムに期限を登録し、納期限の1か月前、1週間前、前日など複数回のアラートを設定しましょう。
毎月の試算表を確認する
決算直前まで利益や税額を把握していない状態では、納税資金を準備できません。
毎月または少なくとも四半期ごとに試算表を作成し、利益と納税見込み額を更新しましょう。
売上が増えている会社ほど、利益と手元資金が一致しない点に注意が必要です。
法人の税金滞納に関するよくある質問
税金は分割払いにできますか?
税務署や自治体との相談により、分割納付が認められる場合があります。
ただし、分割払いが当然に認められるわけではなく、会社の財産状況、入金予定、納税意思などを踏まえて判断されます。
相談時には、毎月確実に支払える金額を算出し、資金繰り表などの根拠資料を準備しましょう。
督促状が届いてから差し押さえまで何日ありますか?
差し押さえまでの期間は一律ではありません。
国税については、督促状を発した日から10日を経過しても完納されていない場合、法律上は差し押さえの要件を満たします。
したがって、「数か月は差し押さえられない」と考えるのは危険です。
督促状が届いたら、記載された期限を待たずに担当窓口へ連絡しましょう。
税金滞納に時効はありますか?
国税の徴収権は、原則として法定納期限から5年間行使されない場合、時効によって消滅します。
ただし、督促、差し押さえ、納税の承認、猶予の申請などによって、時効の完成が猶予されたり、新たに進行したりします。
そのため、税金を放置して時効を待つことは現実的な解決方法ではありません。
税金滞納中でも資金調達はできますか?
税金を滞納している場合でも、利用できる資金調達方法がすべてなくなるわけではありません。
ただし、銀行融資や公的融資では納税証明書の提出を求められることがあり、滞納が審査や手続きに影響する可能性があります。
売掛債権の早期資金化などを検討する場合も、対象債権の差し押さえの有無、手数料、資金化後の収支を十分に確認する必要があります。
まとめ
法人が税金を滞納すると、延滞税や延滞金が発生し、放置すれば預金、売掛金、不動産、車両などを差し押さえられる可能性があります。
特に預金や売掛金の差し押さえは、給与や仕入代金の支払いに影響し、取引先に滞納の事実が伝わる可能性もあるため、事業継続に大きな影響を及ぼします。
納付が難しいと分かった場合は、資金を用意できるまで放置するのではなく、早急に税務署や自治体へ相談しましょう。
納税の猶予や換価の猶予を検討しながら、資産売却、売掛金回収、資金調達などを並行して進めることが重要です。
また、滞納を解消した後は、納税専用口座、資金繰り表、納期限アラートなどを活用し、納税資金を先取りして管理する体制を整えましょう。

