オフバランスとは?オンバランスとの違いやファクタリング・新リース会計基準を解説

what-is-off-balance 売掛金・債権管理

オフバランスとは、一般に、企業が利用している資産や関係する取引のうち、一定の会計上の要件により貸借対照表(B/S)に資産・負債として計上されない状態や、保有していた資産などをB/Sから外すことを指します。

「簿外」と表現されることもありますが、オフバランスそのものが不正というわけではありません。
会計基準に従って資産の売却や金融資産の消滅を認識した結果として、資産がB/Sから外れるケースもあります。

一方、取引の形式だけを整えて、実質的には企業が資産を支配していたり義務を負っていたりする場合には、オフバランスとして処理できない可能性があります。

また、近年は会計基準の改正によってオフバランスとなる取引の範囲が縮小しています。
特にリースについては、新しい「リースに関する会計基準」により、借手は原則として使用権資産とリース負債をB/Sに計上することになります。

本記事では、オフバランスの意味からオンバランスとの違い、ファクタリングや不動産売却などの具体例、新リース会計基準による影響までわかりやすく解説します。

オフバランスとは?

オフバランスとは、実務上、資産や負債、取引に関する権利・義務などが貸借対照表に直接計上されない状態や、資産を売却するなどして貸借対照表から外すことを意味します。

これに対して、貸借対照表に資産や負債として計上されている状態を「オンバランス」と呼びます。

たとえば、企業が銀行から1,000万円を借りて設備を購入すれば、基本的にはB/Sの資産側に設備、負債側に借入金が計上されます。
これは典型的なオンバランス取引です。

一方、保有していた売掛債権を第三者へ譲渡し、会計上の金融資産の消滅認識要件を満たした場合には、売掛金をB/Sから外すことができます。
このような資産の流動化は、オフバランス化の一例といえます。

ただし、「B/Sに載っていない=リスクがない」という意味ではありません。
保証、買戻し義務、契約上のコミットメントなどが残っている場合には、資産をB/Sから外した後も企業に一定のリスクが残ることがあります。

そのため、オフバランス取引を判断するときは、貸借対照表だけではなく契約内容や注記、資金繰りなども確認する必要があります。

オフバランスとオンバランスの違い

オンバランスでは、企業が保有する資産や負う負債が貸借対照表に計上されます。

たとえば借入金で不動産を購入した場合、不動産という資産と借入金という負債がそれぞれB/Sに計上されるため、企業がどの程度の資産を保有し、どの程度の債務を負っているのかが把握しやすくなります。

オフバランスの場合には、資産を売却したり金融資産の消滅を認識したりすることで、従来計上されていた資産がB/Sから外れる場合があります。

ただし、「オフバランス化すればROAや自己資本比率が必ず改善する」と考えるのは正確ではありません。

たとえば1,000万円の売掛金を1,000万円の現金に換えただけであれば、資産の内容が売掛金から現金に変わっただけで、総資産は基本的に変わりません。

一方、資産売却や債権譲渡によって得た資金を借入金の返済に充てれば、資産と負債の双方が減少します。その結果、総資産が減り、ROAや自己資本比率などの指標が改善する場合があります。

つまり、財務指標への影響は「オフバランスにしたかどうか」だけではなく、その後に得た資金をどのように使ったかまで含めて判断する必要があります。

オフバランス化が行われる主な目的

オフバランス化は、単に決算書を良く見せることを目的とするものではありません。
本来は資産の保有方法や資金調達方法を見直し、資本効率や資金繰りを改善するために利用されます。

代表的な目的の一つが、保有資産の圧縮です。

企業が遊休不動産や必要性の低い設備を保有していると、その資産はB/Sに計上され続けます。
売却して資金を成長投資や借入金返済に振り向ければ、資産効率を改善できる可能性があります。

もう一つは資金調達手段の多様化です。
銀行融資だけでなく、売掛債権の譲渡や不動産の流動化などを利用すれば、保有資産を活用して資金を確保できます。

さらに、適切な資産譲渡によって資産価格の下落リスクや信用リスクなどを第三者へ移転できるケースもあります。

ただし、契約上の保証や買戻し義務などによってリスクが企業側に残っている場合には、期待していたリスク移転が実現しない可能性があります。

オフバランス化の代表的な例

不動産や設備の売却

オフバランス化の分かりやすい例が、企業が保有する不動産や設備の売却です。

遊休不動産や事業上の重要性が低い資産を第三者へ売却すれば、対象資産はB/Sから外れ、代わりに現金を得ることができます。

売却資金を借入金の返済に充てれば、資産と負債を同時に圧縮することも可能です。

ただし、形式上は売却していても、実質的な買戻し義務などが付されている場合には、単純な売却として扱えるとは限りません。
契約条件を含めて会計上の判断が必要です。

セール・アンド・リースバック

セール・アンド・リースバックとは、自社が所有する不動産や設備を第三者へ売却した後、同じ資産をリースして利用し続ける取引です。

資産を利用しながら売却代金を確保できるため、資金調達手段として利用されることがあります。

ただし、「売却すればそのまま完全にオフバランスになる」とは限りません。

新リース会計基準では、借手は原則としてリース開始日に「使用権資産」と「リース負債」を計上します。
したがって、以前のようにリースをオフバランス化の代表的手段として単純に説明することは適切ではなくなっています。

ファクタリングによるオフバランス化

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社へ譲渡し、支払期日前に資金化する方法です。

適切な債権譲渡として会計上の金融資産の消滅認識要件を満たせば、売掛金をB/Sから外すことができます。

日本の金融商品会計基準では、金融資産について、契約上の権利を行使した場合や権利を喪失した場合のほか、「権利に対する支配が他に移転したとき」に消滅を認識するとされています。

金融資産に対する支配が移転したと認められるためには、
主に、譲受人の権利が譲渡人やその債権者から法的に保全されていること、
譲受人が金融資産から生じる権利を通常の方法で享受できること、
譲渡人が満期前に当該金融資産を買い戻す権利と義務を実質的に有していないこと、
という要件をすべて満たす必要があります。

したがって、ファクタリングで売掛金をオフバランスにできるかどうかは、単に契約書に「債権譲渡」と書かれているかだけで決まるわけではありません。

また、「償還請求権がある=必ず借入扱い」「ノンリコース=必ずオフバランス」という単純な判定も適切ではありません。
買戻し義務、保証、その他の権利義務を含め、金融資産の消滅認識要件を満たしているかを個別に判断する必要があります。

消滅認識の要件を満たした金融資産はB/Sから外れ、帳簿価額と譲渡対価との差額などが損益として処理されます。
また、譲渡に伴い新たな金融資産や金融負債が発生する場合には、それらを時価で計上することとされています。

ファクタリングを利用する目的は、オフバランス化そのものではなく、売掛金の入金を早めて資金繰りを改善することにあります。
資金化した現金を仕入代金や給与、税金などの支払いに充てることで、資金繰りを安定させる効果が期待できます。

デリバティブを「オフバランス取引」とするのは注意が必要

先物、オプション、スワップなどのデリバティブは、想定元本そのものをB/Sに計上しないことから、歴史的には「オフバランス取引」と説明されることがあります。

しかし、現在の日本の金融商品会計基準では、デリバティブ取引によって生じる正味の債権または債務を時価で貸借対照表に計上し、その評価差額は原則として当期損益として処理します。

そのため、「デリバティブはB/Sに一切計上されない」と説明するのは正確ではありません。

想定元本と実際にB/Sへ計上される時価評価額が大きく異なる場合があるため、デリバティブのリスクを確認するときは、B/S上の金額だけではなく契約額、時価、ヘッジの目的やリスク管理体制などを総合的に確認する必要があります。

オフバランスのメリット

オフバランス化には、適切に利用することでいくつかのメリットがあります。

まず、保有資産を売却することで資金を確保できます。遊休資産や売掛債権などを現金化すれば、銀行借入だけに依存しない資金調達が可能になります。

また、現金化した資金で借入金を返済すれば、資産と負債の圧縮につながり、財務指標が改善する場合があります。

さらに、資産を適切に第三者へ移転できれば、価格下落リスクや信用リスク、維持管理コストなどを軽減できる可能性があります。

ただし、これらのメリットは取引内容によって異なります。
「オフバランスにすれば必ず財務体質が改善する」というものではない点には注意が必要です。

オフバランスのデメリット

オフバランス化では、資金調達コストや契約条件にも注意する必要があります。

たとえばファクタリングでは手数料が発生します。
セール・アンド・リースバックでは資産売却後もリース料の支払いが続くため、長期間でみると支払総額が大きくなる場合があります。

また、B/Sから資産が外れても、保証やその他の契約上の義務が残っていれば企業のリスクが完全になくなるわけではありません。

さらに、会計基準上の要件を満たしていないにもかかわらず資産や負債を意図的にB/Sから外せば、不適切な会計処理となる可能性があります。

そのため、オフバランス化は「決算書を良く見せるためのテクニック」ではなく、資産・負債・キャッシュフローを適正に管理するための手段として考える必要があります。

新リース会計基準でオフバランスの範囲は縮小

オフバランスを考えるうえで特に重要なのが、新しいリース会計基準です。

企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から原則適用されます。
また、2025年4月1日以後開始する年度から早期適用することも可能です。

新基準では、借手は原則としてリース開始日に使用権資産とリース負債を計上します。
従来オフバランスとなることの多かった借手のオペレーティング・リースについても、B/Sへの計上が必要となるため、企業によっては総資産や負債が大きく増える可能性があります。

ただし、すべてのリースが必ずオンバランスになるわけではありません。

借手のリース期間が12か月以内で購入オプションを含まない「短期リース」については、使用権資産・リース負債を計上せず、リース料を原則として期間にわたって費用計上する簡便処理を選択できます。

また、一定の少額リースについても簡便的な取扱いが認められています。
新基準の適用指針では、従来の「リース契約1件当たり300万円以下」という考え方を踏襲する方法のほか、新品時の原資産の価値が少額であるリースについて簡便処理を選択する方法も設けられています。

そのため、新リース会計基準への対応では、単に現在のリース契約一覧を確認するだけではなく、契約期間、延長・解約オプション、購入オプション、リース料などを整理し、使用権資産とリース負債がどの程度計上されるのかを事前に試算しておくことが重要です。

SPCを使えば必ずオフバランスになるわけではない

不動産や債権の流動化では、SPC(特別目的会社)が利用されることがあります。

ただし、「SPCに資産を移せば必ず連結B/Sから外れる」と考えるのは適切ではありません。

日本基準では、会社だけでなく特定目的会社など会社に準ずる事業体についても、子会社または関連会社に該当するかを判定します。
一定の要件を満たす特別目的会社については資産譲渡会社の子会社に該当しないものと推定する取扱いがありますが、SPCであれば無条件に連結対象外になるわけではありません。

したがって、証券化や流動化を検討するときは、資産の売却条件だけでなく、SPCとの関係や連結範囲への影響についても確認する必要があります。

オフバランスを検討するときのポイント

オフバランス化を検討するときは、まず目的を明確にしましょう。
「資金繰りを改善したい」「不要な資産を売却したい」
「借入金を減らしたい」「信用リスクを移転したい」
など、目的によって適切な方法は異なります。

次に重要なのが契約条件です。
ファクタリングなら金融資産の消滅認識要件、資産売却なら売却後に残る権利・義務、リースならリース期間やオプションなどを確認します。

さらに、会計上の処理だけでなく、税務、法務、資金繰り、手数料やリース料などのコストを含めて総合的に検討する必要があります。

特に重要な取引については、契約締結後ではなく、スキームを設計する段階で公認会計士や税理士などの専門家へ確認する方が安全です。

オフバランス取引は違法?

オフバランス取引そのものは違法ではありません。
会計基準に従って資産の売却や金融資産の消滅を認識した結果、資産が貸借対照表から外れることは通常の会計処理としてあり得ます。

問題となるのは、実態として資産や負債を保有しているにもかかわらず、財務内容を良く見せる目的などで不適切にB/Sから除外するケースです。

重要なのは、「オフバランスにすること」を目的にするのではなく、取引の経済的実態を正しく財務諸表へ反映することです。

まとめ

オフバランスとは、資産や負債などが貸借対照表に計上されない状態や、保有していた資産を適切な取引によってB/Sから外すことを指す実務上の表現です。

資産売却やファクタリングなどを活用すれば、資産の流動化や資金繰り改善につながる可能性があります。

ただし、オフバランス化しただけでROAや自己資本比率が必ず改善するわけではありません。
資産を現金へ置き換えただけなら総資産がほとんど変わらない場合もあり、財務指標への効果は資金の使い方まで含めて考える必要があります。

また、ファクタリングによる売掛金のオフバランス化では、単に償還請求権の有無だけを見るのではなく、金融商品会計基準が定める金融資産の消滅認識要件を満たしているかが重要です。

さらに、2027年4月1日以後開始する事業年度から原則適用される新リース会計基準によって、借手のリースは原則として使用権資産とリース負債を計上することになります。
従来の「リース=オフバランス」という考え方は大きく変わるため注意が必要です。

オフバランスを検討するときは、決算書の見え方だけではなく、資金繰り、コスト、リスク移転、契約条件、会計基準への適合性まで含めて判断することが重要です。

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